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新型コロナウイルスの流行下で、公共図書館での電子書籍の貸し出し数が都内でも急増している。いつでもどこでもスマートフォンやパソコンで本を借りて読めるため、来館する必要がない。全国に先駆けて平成19年に電子図書館を導入した東京都千代田区立図書館では昨年、電子書籍の貸し出し点数が前年比273%と大幅に増えた。コロナの流行を機に、図書館利用者の裾野を大きく広げる可能性がある。

 

千代田区立図書館の電子書籍の蔵書数は、約1万冊と全国トップクラス。ヒアリングができる英語の学習参考書や、朗読機能が付いた子供向けの絵本など、電子ならではの書籍が人気を集めているという。

 

同館広報室の坂巻睦さんは「来館せずに借りられる点が便利で、人気が高まっている。コロナ流行後は、全国の自治体からやり方についての問い合わせが増え、広がりを感じている」と期待感を示す。

 

実際、全国の自治体で電子図書館の設置は急速に進んでいる。電子出版制作・流通協議会によると、今年7月1日時点で229自治体が電子図書館を導入しており、前年同期の100自治体から倍以上に増えた。今年度内にはさらに40自治体も導入を予定している。

 

電子書籍とはいえ、貸し出しに関しては紙の本と同じだ。千代田区立図書館では、1冊につき1人しか借りられないよう設定しており、貸し出し中の資料は予約して順番を待たなければならない。借りた資料は期限が来ると自動的に〝返却〟され、端末上で読めなくなる。紙の本は区民以外も借りられるが、電子書籍は千代田区に在住か在学、在勤でなければ借りられないといった違いもある。

 

一般の電子書籍との大きな違いは、購入金額の高さだ。個人で購入する電子書籍は紙の本より安い場合が多いが、図書館が貸し出し用に用意する場合、1冊当たりのコストは紙の本の約2~3倍高額になる。

 

そのため、予算が潤沢な自治体でなければ電子書籍の冊数を増やしにくいといった課題もある。千代田区立図書館では、期間を2年間としたり、貸し出し回数を52回としたりして電子書籍のライセンスを購入しており、坂巻さんは「紙の本と違い、買って終わりではないので、その都度コストもかかる」と話す。

 

このほか、図書館向け書籍を販売する図書館流通センター(TRC)が各出版社と協議したリストから選書する必要があるため、貸し出せる資料がやや古いという制限もある。

 

一方の利点として、電子図書館や図書館運営に詳しい専修大の植村八潮教授は「業務削減により人件費などが減るため、トータルで見れば安く抑えられることもある」と説明する。

 

来館の必要がなく、読み上げなどの機能もあり、障害者でも利用しやすいため、図書館利用者の裾野を広げることが期待されている電子書籍。植村教授は「現状、図書館は市民の2割しか利用していないと言われている。残り8割の人の利用率を上げ、電子書籍を図書館に定着させていくことが今後の課題といえるのでは」と指摘している。

 

筆者:永井大輔(産経新聞)

 

 

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